[絵本]さんまいのおふだ(新潟の昔話 再話:水沢謙,絵:梶山 俊夫,出版社:福音館書店)

文=まきむら あきこ

絵本のパティオ

 今回紹介する「さんまいのおふだ」は、山に花枝を採りに出掛けたお寺の小僧さんが道に迷い、恐ろしい山姥に遭遇します。そして、3枚のお札を使い、命からがら逃げかえってくるという、ハラハラドキドキ系の絵本です。

 悪者から逃れるために、道具を使って敵の目を欺くお話は、日本に限らず世界中で古くから語り継がれています。不思議なことに、使える道具がだいたい「3つ」というも共通しています。1つ目で道具の威力を試し、調子にのって2つ目を使ってしまい、そして最後の3つ目で決死の勝負にでる・・・物語の展開をドラマチックにするバランスの良さで「3つ」が好まれているのかもしれません。

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 いくつもの「さんまいのおふだ」の絵本が出版されていますが、この絵本は、流れるような筆さばきで描かれた絵とリズムのある語り口で、怖いお話の中にどこかユーモラスな雰囲気を漂わせているのが特徴です。

 梶山俊夫氏の絵は、場面に不穏な空気が漂ってくると、登場人物の表情や体付きが、波立つようにゆがんでいきます。2次元の絵からなんともいえない動きのある緊張感が伝わってくるのです。

 小僧さんは、べんじょのかみさまに助けられ、なんとか山姥の家を脱出しますが、執念深い山姥は逃すものかと小僧さんを追いかけてきます。追い付かれそうになると3枚のお札を使い、お寺に逃げ帰ります。

 しかし、お寺は戸締りがされていて中に入ることができません。「おしょうさま はや とを あけてくんなせ」と、小僧さんは必死に戸を叩きますが、おしょうさんは悠然として身支度していて、なかなか戸をあけてくれません。

「おうい いま おきて」 「はやはや」

「おうい いま ふんどし しめて」「はや はや」

「おうい いま おび しめて」 「はや はや」

「おうい いま ぞうり はいて」 「はや はや はや」

 小僧さんの焦りといっしょに、こどもたちの鼓動も聞こえてきそうです。読み手にとって、読み聞かせの醍醐味を堪能できる場面でもあります。和尚さんの知恵で山姥は退治され、お話は終わります。でも何度も読み返していると、山姥が少しかわいそうな気がしてきます。寂しさが怨念となり、小僧さんに執着したのかもしれません。

 でもあれだけのパワーのあった山姥です、きっと和尚さんの浄化の力をかりて、よいおばあさんに、いえいえ、かわいい女の子に生まれ変わるかもしれませんね。

 この絵本は、大人が思う以上に怖がるお子さんもいるようです。そんなときは、最後に絵本の表紙をみせてあげてください。にこにこ微笑んだべんじょのかみさまが、隙間なく小僧さんを取り囲んでいます。そう、この絵本自体が、小僧さんのお守りとなっているのです。

タイトル さんまいのおふだ
再話:水沢 謙一 絵:梶山 俊夫
出版社 福音館書店
発売日 1985年2月
価格 840円
ページ数 32ページ
対象年齢 読んであげるなら4歳から

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