[電子書籍]第2回 電子書籍の絵本を作るためのユニットを結成

文=マキセヒロシ(イラストレーター)

[絵本の仕事]   前回は電子書籍の絵本「アリアリ・データタワー」の話でした。今回は、そもそも、どうして絵本を電子書籍で作ろうと思ったのかを、書いてみたいと思います。

 話は2010年、アップルがiPadを初めて発売した年にさかのぼります。このタブレットの登場は、本当に衝撃的でした。そして、昔から付き合いのある翻訳兼ライターのサイトウくんと、何かしようということで、電子書籍ユニットを結成しました。

 電子書籍という形なら、自分たちで本のデータ(版下)さえ用意すれば、オンラインで販売する事ができる。しかもサイトウくんの翻訳力をプラスしたら、自分たちの作ったものを世界中の人に届けられる。マーケットは世界中だと思うと、本当にワクワクしました。

 そして2011年。Kindle3が発売になり購入しました。そこで、失敗しても失うものは何もないという精神で、米アマゾンのKindle用に「アリアリ」の絵本制作を始めました。どうして絵本なのかというと、最低2人でも形になると思ったからです。

 実は、アリアリは高校の美術の絵本制作の中で生まれたキャラクターです。でも、仕事での登場機会はなく、それまではお蔵入りの状態でした。そんなアリアリを引っ張り出し、ストーリーを付けました。それが最初に作った電子書籍です。タイトルは「アリアリ・電子ポスターさんの歌声」と名付けました。

 でも、当時はKindleストアには、日本語のサイトはまだありません。世界中で売りたかったので英語に翻訳し、なんとかストアに並べました。実は日本語版と北京語版も作っていたのですが、その当時、どちらにもキンドルストアがなかったので置けませんでした。日本語のサイトはいずれオープンすると踏んでいたものの、なかなかオープンせず「いつになったらオープンするのだろう」と、思っていました。

 ストーリーは、やはりITの要素を含んでいます。巨大な顔の形をしている住宅に住んでいるアリアリたちの楽しみは、住宅の外壁に貼り付けられている「電子ポスターさん」の歌声を聴くことでした。ある日、強い風に吹かれて舞い上がってしまった電子ポスターさんを、アリアリは手を伸ばして救います。

 お礼と共に「あなたのお部屋に行ってみたいわ」と、言われたアリアリは戸惑いながらもOKします。部屋の中で2人がくつろいでいる時、いなくなった電子ポスターさんを探して、仲間達が大慌てしている、といういう話です(ここで登場する電子ポスターとは、画面の中が動く電子看板のことです、デジタルサイネージですね)。

アリアリ・電子ポスターさん  アリアリ・電子ポスターさん アリアリ・電子ポスターさん

 初めて作った電子書籍ですが、そもそも認知度がありません。にも関わらず宣伝をろくにしなかったので、まったくといっていいほど売れませんでした。この反省から、まずはアリアリを知ってもらおうと「アリアリ・階段アプリ」という話を描き、電子書籍販売サイトの「ブクログのパブー」や「wook」「ツイパブ」などで、無料で読んでもらったり、SNSなどで宣伝して、何とか認知度をあげようとしてきました。

 「アリアリ・階段アプリ」は、ITにSFの要素を混ぜ込んだ話です。最初に出てくるのは、女の子の「アンナちゃん」とアリアリ。あるとき、アンナちゃんがタブレットを使って「階段」というアプリで遊んでいます。アリアリは、それをコップの陰から覗いています。

 アンナちゃんが、タブレットで遊び終わって部屋から出て行くと、アリアリはタブレットの「階段」アプリのアイコンにタップしました。するとタブレットの画面が真ん中から左右に開き、下に下る階段が出てきました。アリアリがその階段を下ると、画面は何事もなかったように元通り。。。。いったいアリアリは何をしているのでしょう…という話です。

アリアリ・階段アプリ アリアリ・階段アプリ アリアリ・階段アプリ

 そんなこんなで、試行錯誤を続けていた2012年のことです。電子書籍の雑誌「電子雑誌トルタル」の編集長、古田さんに誘われて、アリアリを5コマの絵本という形で登場させました。

 トルタルは、無料で配布している電子雑誌です。作っている人間は「電子雑誌」というキーワードに惹かれて集まってきたメンバー。本業の仕事は多種多様です。そのため、文章からイラスト、動画や音楽までを詰め込んだ面白いコンテンツが揃っています。

 それをEPUBというフォーマットにまとめ、1つの電子雑誌に仕上げています。アリアリは、その中の一つのコンテンツとして「アリアリ・コンテンツ泥棒」「アリアリ・21世紀の偉人伝」「アリアリ・かくれんぼ2.0」という作品を載せてきました。

電子雑誌「トルタル」

 こうして振り返ると、最初は二人いれば、と思って始めた電子書籍ですが、やはり人のつながりがあり、いろいろな人に読んでもらったり、アドバイスをもらったりして、できあがってきた、ということですね。やはりコンテンツは人が作り上げていくものですね。

 さて、次はどんな環境で、どうやって作っているのかを書いてみようと思います。

アリアリの作品 URL
アリアリ・電子ポスターさんの歌声(英語版) http://www.amazon.com/dp/B004XJ4QLS
アリアリ・階段アプリ(日本語版・無料) http://p.booklog.jp/book/38243
アリアリ・階段アプリ(英語版・無料) http://p.booklog.jp/book/53352
電子雑誌トルタル http://kanakanabooks.com/category/books

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