宮沢賢治「雨ニモマケズ」と英語の訳の不思議-その1

work 宮沢賢治の作品で一番知られているのは、「雨ニモマケズ」でしょう。この詩は、宮沢賢治と交流があり、内村鑑三の弟子の一人であった斉藤宗次郎がモデルであるとも言われています。確かに、敬虔なキリスト教徒であった斉藤宗次郎の行動は、この詩に重ねることもできるのですが、その一方で異論もあり、宮沢賢治は自分に対するメモだったのではないかという指摘もされています。いずれにせよ、この詩に書かれたような生き方が、人の心を打つのは間違いないでしょう。

 今回の東日本大震災を悼み、世界各地で追悼式が行われています。米国においては、2011年4月、ワシントンD.Cにある国立大聖堂で追悼式が行われました。この追悼式で、雨ニモマケズが英訳され朗読されました。その様子は、公式サイトで映像として見ることができます。

公式サイトへのリンク

 雨ニモマケズは29分過ぎから始まります。短い時間ですが、心地よい詩に仕上がっています。今までにも宮沢賢治の詩は、何度も英訳されており、WikipediaやYoutubeにも掲載されています。ところが、今回、朗読された詩はそれらとは異なっており、いったい誰が訳したのだろうと、不思議に思っていました。少し調べたところ、今回の詩に近いものが、宮沢賢治の研究者によって英訳されているんですが、それとも、どうも違っているんですね。はて、どういうことだろう、といろいろ調べていたのですが、わかりませんでした。

 ここで朗読されたものは、どうもオリジナルのようで、かなり練り上げられた詩になっています。しかもリズムが格段に良く、分かりやすいものになっています。

 追悼式のプログラムを見ると、「AMENIMO MAKEZU · UNBEATEN BY RAIN」と書かれています。さらに、調べていくと、どうも日本の寺院のオリジナルかなぁ、と推定しました。→関係がありそうなお寺のWebサイト

 が、リンクを辿って調べているうちに、これもまた違うことがわかりました。さて、と誰が訳したのだろうと頭をひねって、とりあえず記事に書いたら、何と、訳したご本人から連絡をいただきました。この詩は、イギリスにお住まいの方が中心になって訳された詩だったんですね。驚きました。

 どうして、イギリスで訳された詩が、アメリカの、しかも国立大聖堂で読み上げられたのだろう、と不思議すぎるので、今回はご本人に伺ったところ、次のような経緯でした。

 まず、翻訳されたのは、現在、イギリスにお住まいのAkiyamaさんとおっしゃる方です。Akiyamaさんは、今回の震災を知って、震災への寄付を募ろうと、ポスターを作成することにしたそうです。その時に翻訳したのが、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」だったんですね。

 今までの訳とは違っていたのは、既存の英訳されたものを使わずオリジナルで翻訳したこと、そして、英語圏の人達だけなく、世界中にいる人に分かってもらえるように、世界各地にいる人達に手伝ってもらったことから、こうした英訳ができたそうです。

 それをWebサイトに掲載したところ、インターネットで検索して見つけられたらしく、それがそのまま朗読された、とのことでした。それって、すごいことですよね。

 以下に、英訳された宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を掲載します。

Unbeaten by rain
Unbeaten by wind
Unbowed by the snow and the summer heat
Strong in body
Free from greed
Without any anger
Always serene

With a handful of brown rice a day
Miso and a small amount of vegetables suffice
Whatever happens
Consider yourself last, always put others first
Understand from your observation and experience
Never lose sight of these things

In the shadows of the pine groves in the fields
Live modestly under a thatched roof
In the East, if there is a sick child
Go there and take care of him
In the West, if there is an exhausted mother
Go there and relieve her of her burden
In the South, if there is a man near death
Go there and comfort him, tell him “Don’t be afraid”
In the North, if there is an argument and a legal dispute
Go there and persuade them it’s not worth it

In a drought, shed tears
In a cold summer, carry on
Even with a sense of loss
Being called a fool
Being neither praised nor a burden

Such a person I want to be

Translation Copyright © 2011 by Catherine Iwata, Fredrich Ulrich, Orlagh O’Reilly, Helen Bartos, Minaeri Park, Mokmi Park, Helen Bartos, Sophie Sampson, Kotomi Okbo, Eva Tuunanen, Alessanra Lauria, Sophie Sampson, Miwa Block, Nancy O’Reilly, Jasmina Vico & Yasuko Akiyama

 震災への寄付のためポスターが作られて販売もされているようです(2011年6月時点)。Paypalで購入することもできます。日本でも購入できますね。英語なので少し敷居が高いかもしれませんが、書かれた方は関西の方のようですので、サイトを見てみてください→こちらです。

カテゴリー: 絵本の仕事 パーマリンク