電子書籍

[電子書籍]第3回 電子書籍の絵本は、こんな体制で作ってます

文=マキセ ヒロシ(イラストレーター)

[絵本の仕事] 前回は、電子書籍の絵本を作る過程で、いろいろな人たちに出会い、徐々に輪が広がってきたという話でした。今回は、じゃあ、どんな体制で、どうやって電子書籍を作っているのかを、書いてみることにします。

 私も紙で仕事をしてきた人間なので、基本は紙の作り方がベースです。そこに電子書籍の作り方が加わっています。まず、私がおおまかなストーリーの流れを考えます。それを、編集を担当するホンマさんと、メールやSNSで話し合います。ホンマさんはあるパーティで知り合った編集兼ライターで、ITやネットワークにも詳しく、電子書籍にも興味を持っていました。

 その話合いをもとに、完成に近い手描きラフを描きます。この段階で、余分なシーンや言葉はどんどん削り、イメージを膨らましたほうがいいところは新たに付け加えたりします。こういう場合、クールな編集者の視点というのは本当にありがたいです。 電子書籍を作る場合、すべて自分で作業できてしまうのですが、多くの人に読んでもらうためには、作者とは違う視点からアドバイスしてくれる人は必要だと思います。

 さて、それが終わったら私の作業。いよいよ、イラスト制作です。ラフをスキャナーで取り込み、トレースしながらイラストを描いていきます。Macの環境で、ソフトウエアはペインター、タブレットはワコムのものを使っています。

 絵を描くときの解像度は350dpi、サイズは724×1024で制作しています。これは、アマゾンのKindleをターゲットにしているからで、将来的にはもっと高い解像度で描く必要が出てくるでしょうね。

 次にイラストレーターというソフトで、出来上がったイラスト画像に文章を配置していきます。これは、少し前であれば、出版社の制作が行う仕事ですね。そしてPDFというフォーマットで書き出します。これが、初稿のような感じです。それをホンマさん、サイトウくんに文字の誤字脱字がないか、チェックをしてもらいます。

 文字の修正が終わってからは、電子書籍の工程。まず、PDFを1枚1枚のJEPGの画像に変換します。電子書籍には「.book」とか「XMDF」といった、いろいろなフォーマットがあります。今はEPUBが主流になりつつあり、アマゾンはEPUBをベースにしたmobiというオリジナルのフォーマットを使っています。ですので、それに合わせて絵本も、mobiで作成しています。

 電子書籍には、文字を主体にしたリフロー型と、写真や画像を主体にしたフィックス型という形式があります。リフロー型は、文字の大きさを自由に変えられたりします。しかし絵本では、絵と文章の位置がずれてしまってはまずいので、フィックス型で作っています。1枚1枚に絵と文章がある画像を作っている感じでしょうか。

 材料が揃ったら、画像を電子書籍というパッケージにする作業です。ここは、電子書籍やWEBの仕事をしている田嶋さんの力を借りています。(田嶋さんとは電子書籍に興味を持つ方々の集まりで知り合いました)。

 できあがったデータを送ると、数時間後にはmobiのデータとなって、つまりKindleで読める形になって手元に戻ってきます。それを確認し、日本版キンドルストアに出来上がったmobiデータをアップロード。販売する地域(日本のみ、または世界のキンドルストアを選ぶ事ができます)を決め、金額を決めたら作業は終わり。あとはこの電子書籍の絵本、電子絵本を販売するだけです。

 英語版などの翻訳ものの場合の事も記します。まず翻訳担当のサイトウくんが、完成した日本語データをもとに翻訳作業をします。その後、海外在住の仕事仲間に「この英語は自然ですか?」と問うネイティヴ・チェックをスカイプを使っておこないます。

 サイトウくんがこの電子書籍の作業で一番こだわっている箇所がここです。ストーリーを自然な形で伝えるために現地の人の監修はどうしても必要です。先日、東京ビッグサイトで開催された「海外マンガフェスタ」に出展した際、外人のお客さんに翻訳が自然だとほめられたのが嬉しそうでした。

 アリアリではなく、新しい絵本も作りました。タイトルは「ミュジーのアイデア買取り」。ミュジーというキャラクターは、ある雑誌の特集記事に描いたイラストから発展させました。鍵盤のような歯、音符のような足が特徴です。

 ストーリーはこんな感じ。日の目を見ないアイデアや、コンペでやぶれたアイデアを高価買入するミュジーのお店。ここを訪ねたカトーはミュジーの前でプレゼンテーションをします。良いアイデアならなんでもお金を払うミュジーは、新鮮なカトーのアイデアに喜びます。そして契約成立。カトーはお金をにぎって店を出る。さて、手に入れたアイデアをミュジーは何に使うのでしょうか…。

ミュジーのアイディア買取り ミュジーのアイディア買取り ミュジーのアイディア買取り

このように、以前の紙に比べて個人のアイディアを形にしようとした時、敷居がとても下がっている、ということを実感できます。以上、短い連載でしたが、電子書籍でこんな絵本をつくっている人たちがいると、伝われば嬉しいです。

前にお話したアリアリ・データタワーは、アマゾンで12月21日から、12月25日まで無料キャンペーン中です。もし、時間がありましたら、読んでみてください。

作品名 ミュジーのタイトル買取り
作者 作:マキセ ヒロシ、 編集:ホンマ オサム
出版 コーヒーサミット
価格 200円
URL http://www.amazon.co.jp/dp/B00G0A2ELC/
http://www.coffeesummit.net/
関連URL 田嶋淳さんの「電書魂」
http://densyodamasii.com/

投稿日: 作成者: Pictio Editor カテゴリー: 絵本の仕事

[電子書籍]第2回 電子書籍の絵本を作るためのユニットを結成

文=マキセヒロシ(イラストレーター)

[絵本の仕事]   前回は電子書籍の絵本「アリアリ・データタワー」の話でした。今回は、そもそも、どうして絵本を電子書籍で作ろうと思ったのかを、書いてみたいと思います。

 話は2010年、アップルがiPadを初めて発売した年にさかのぼります。このタブレットの登場は、本当に衝撃的でした。そして、昔から付き合いのある翻訳兼ライターのサイトウくんと、何かしようということで、電子書籍ユニットを結成しました。

 電子書籍という形なら、自分たちで本のデータ(版下)さえ用意すれば、オンラインで販売する事ができる。しかもサイトウくんの翻訳力をプラスしたら、自分たちの作ったものを世界中の人に届けられる。マーケットは世界中だと思うと、本当にワクワクしました。

 そして2011年。Kindle3が発売になり購入しました。そこで、失敗しても失うものは何もないという精神で、米アマゾンのKindle用に「アリアリ」の絵本制作を始めました。どうして絵本なのかというと、最低2人でも形になると思ったからです。

 実は、アリアリは高校の美術の絵本制作の中で生まれたキャラクターです。でも、仕事での登場機会はなく、それまではお蔵入りの状態でした。そんなアリアリを引っ張り出し、ストーリーを付けました。それが最初に作った電子書籍です。タイトルは「アリアリ・電子ポスターさんの歌声」と名付けました。

 でも、当時はKindleストアには、日本語のサイトはまだありません。世界中で売りたかったので英語に翻訳し、なんとかストアに並べました。実は日本語版と北京語版も作っていたのですが、その当時、どちらにもキンドルストアがなかったので置けませんでした。日本語のサイトはいずれオープンすると踏んでいたものの、なかなかオープンせず「いつになったらオープンするのだろう」と、思っていました。

 ストーリーは、やはりITの要素を含んでいます。巨大な顔の形をしている住宅に住んでいるアリアリたちの楽しみは、住宅の外壁に貼り付けられている「電子ポスターさん」の歌声を聴くことでした。ある日、強い風に吹かれて舞い上がってしまった電子ポスターさんを、アリアリは手を伸ばして救います。

 お礼と共に「あなたのお部屋に行ってみたいわ」と、言われたアリアリは戸惑いながらもOKします。部屋の中で2人がくつろいでいる時、いなくなった電子ポスターさんを探して、仲間達が大慌てしている、といういう話です(ここで登場する電子ポスターとは、画面の中が動く電子看板のことです、デジタルサイネージですね)。

アリアリ・電子ポスターさん  アリアリ・電子ポスターさん アリアリ・電子ポスターさん

 初めて作った電子書籍ですが、そもそも認知度がありません。にも関わらず宣伝をろくにしなかったので、まったくといっていいほど売れませんでした。この反省から、まずはアリアリを知ってもらおうと「アリアリ・階段アプリ」という話を描き、電子書籍販売サイトの「ブクログのパブー」や「wook」「ツイパブ」などで、無料で読んでもらったり、SNSなどで宣伝して、何とか認知度をあげようとしてきました。

 「アリアリ・階段アプリ」は、ITにSFの要素を混ぜ込んだ話です。最初に出てくるのは、女の子の「アンナちゃん」とアリアリ。あるとき、アンナちゃんがタブレットを使って「階段」というアプリで遊んでいます。アリアリは、それをコップの陰から覗いています。

 アンナちゃんが、タブレットで遊び終わって部屋から出て行くと、アリアリはタブレットの「階段」アプリのアイコンにタップしました。するとタブレットの画面が真ん中から左右に開き、下に下る階段が出てきました。アリアリがその階段を下ると、画面は何事もなかったように元通り。。。。いったいアリアリは何をしているのでしょう…という話です。

アリアリ・階段アプリ アリアリ・階段アプリ アリアリ・階段アプリ

 そんなこんなで、試行錯誤を続けていた2012年のことです。電子書籍の雑誌「電子雑誌トルタル」の編集長、古田さんに誘われて、アリアリを5コマの絵本という形で登場させました。

 トルタルは、無料で配布している電子雑誌です。作っている人間は「電子雑誌」というキーワードに惹かれて集まってきたメンバー。本業の仕事は多種多様です。そのため、文章からイラスト、動画や音楽までを詰め込んだ面白いコンテンツが揃っています。

 それをEPUBというフォーマットにまとめ、1つの電子雑誌に仕上げています。アリアリは、その中の一つのコンテンツとして「アリアリ・コンテンツ泥棒」「アリアリ・21世紀の偉人伝」「アリアリ・かくれんぼ2.0」という作品を載せてきました。

電子雑誌「トルタル」

 こうして振り返ると、最初は二人いれば、と思って始めた電子書籍ですが、やはり人のつながりがあり、いろいろな人に読んでもらったり、アドバイスをもらったりして、できあがってきた、ということですね。やはりコンテンツは人が作り上げていくものですね。

 さて、次はどんな環境で、どうやって作っているのかを書いてみようと思います。

アリアリの作品 URL
アリアリ・電子ポスターさんの歌声(英語版) http://www.amazon.com/dp/B004XJ4QLS
アリアリ・階段アプリ(日本語版・無料) http://p.booklog.jp/book/38243
アリアリ・階段アプリ(英語版・無料) http://p.booklog.jp/book/53352
電子雑誌トルタル http://kanakanabooks.com/category/books

投稿日: 作成者: Pictio Editor カテゴリー: 絵本の仕事

[電子書籍]第1回 絵本の電子書籍の作り方

文=マキセ ヒロシ(イラストレーター)

[絵本の仕事]  イラストレーターのマキセです。普段は、雑誌などにイラストを描いていますが、少し前に大人向けの絵本を電子書籍として作ってみました。今回から3回ほど、大人向けの電子書籍の絵本「アリアリ」を作ったことを書いてみたいと思います。

アリアリ・データタワー どうして、このタイミングなのかというと、2013年12月21日(午後3時頃)から12月25日まで、「アリアリ・データタワー」の日本語版と英語版の無料キャンペーンをAmazonで実施するからです。

 キンドル以外にも、iPad、iPhone、アンドロイド、PCなどでもアプリを入れることで「アリアリ」を読むことができます(ただしアマゾンの会員のみとなりますが)。大人向けの絵本なので、ぜひ、この機会にダウンロードして読んでみてください。感想をお寄せくだされば、とてもうれしいです。

 ちなみに絵本といっても、きわめて現代的なお話です。ITやネットワーク周りの話題が飛び出すので、幼児向けではありません。大人向けです。ヘンテコなキャラクターを見つけて、お子さんがビックリして泣いてしまったら、ごめんなさい。

 今回の「アリアリ・データタワー」は「クラウドサービス」がテーマです。クラウドサービスは、ネットワーク上で提供されるサービスを指しますが、その中にはインターネット上にデータを保存するサービスもあり、家族の写真や動画、大切な書類などを保存しておくことができます。もちろん、自由に出し入れができます。

 さて、ストーリーです。「データタワー」というクラウドサービスの会社で働く、かわいいモンスターのアリアリは、2年前から会員のルーという青年のブースを担当しています。今では彼のお父さんやお母さん、そしてニコという彼女のことまで知っています。

アリアリ・データタワーアリアリ・データタワー

 ある日、そのルーの写真に怪しい人影を見つけます。それは日増しにルーに近づいてきました。そこで大切なお客様に何かあっては大変!と、アリアリ自ら危険を知らせにいきます… という、お話です。

 ちなみに、このアリアリ、今回はクラウドサービスの仕事をしていますが、話によって性格や設定、身体の大きさは変わっています。世の中のコンテンツを盗む泥棒だったり、本の編集長だったりと、本によってコロコロ変わります。ですので、前の話を読まなくても大丈夫。

 こういった手軽に読める本は、本当に電子書籍に向いていると思います。次回は、アリアリをどうやって電子書籍の絵本にしていったのか、そのあたりを思い出しながら書いてみたいと思います。

タイトル アリアリ・データタワー
作者 作:マキセ ヒロシ、 編集:ホンマ オサム
翻訳: サイトウ ノゾム、K.ムカイ
出版社 コーヒーサミット
URL http://www.amazon.co.jp/dp/B00DQT4SIM(日本語版)
http://www.amazon.co.jp/dp/B00FOT9P5I(英語版)
価格 200円
対象年齢 中学生以上
関連URL http://www.coffeesummit.net/ebook/data/index.html
http://youtu.be/MHKs2X1_7iA

投稿日: 作成者: Pictio Editor カテゴリー: 絵本の仕事