松谷みよ子

[絵本関連のNews]児童文学作家の松谷みよ子さんが死去

文=Pictio編集部

絵本関連のニュース 2015年2月28日、児童文学作家の松谷みよ子さんが89歳で亡くなられました。松谷さんは、大正15年(1926年)に生まれ、太平洋戦争の時には、長野県に疎開します。この時、児童文学作家の坪田譲治氏と出会い、児童文学を学んでいきます。

 その後、坪田氏が主催していた童話雑誌「びわの実学校」の編集に携わります。このびわの実学校からは、松谷みよ子さんのほかにも、あまんきみこさん、宮川ひろさんなど、児童文学の大家が育っていますね。

たつのこたろう その後、劇団活動で知り合った瀬川拓男氏と結婚、劇団を創設して民話を採訪を始めます。1957年には「信州の民話」を出版し、翌年の1958年には「秋田の民話」を出版します。

 当時は、まだ昔話を語れる人も多く残っていたのでしょう。文章を読むと、文章の端々に土地の雰囲気が感じられるような筆遣いとなっています。これらの民話を採訪するとともに、それらの伝承に創作を加えた物語を書いています。1960年には「龍の子太郎」という作品を世に送り出しました。

 また、1964年には「ちいさいモモちゃん」、1974年には「モモちゃんとプー」を出版します。これらは、松谷みよ子さんんの長女がモデルとなっていて、松谷さんは片手で赤ん坊を抱きながら、もう片方の手で原稿を書いたりもされたそうです。

いないいないばあ シリーズ3作目は「モモちゃんとアカネちゃん」という作品です。これは松谷さんの次女が、書いて欲しいと頼んだからだそうです。

 1967年には、松谷さんが文章を、そして瀬川康男氏が絵を手がけた「いないいないばあ」を出版します。当時、0歳という年齢を意識した絵本というのは、ほとんどなかったのですが、この絵本によって0歳からでも絵本を読むことが(正確には聞くことが)できるということが、広く知られるようにもなりました。この本は今でもよく読まれています。

 「いないいないばあ」に関しては、他社から類似の作品が多く出るようになり、大手の出版社からは、タイトルをそっくりまねた絵本も発売され、それに対して裁判も起こしていたほどです。

 さて、松谷さんの書かれた民話を読むと、元からあった昔話を1度、自分の中に取り込み咀嚼してから自分の言葉として、リズムのよい文章で紡ぎ出しています。単に再話しただけではないことが、今の時代でも読み継がれている証左だと思います。

 また、死や別れなどにから目を背けていません。書き方はいろいろありますが、読み手の子どもたちに伝えています。モモちゃんのシリーズを読んだ方であれば、そのことははっきりと感じられたのではないでしょうか。

 松谷さんの書かれた本は、図書館でも必ず見つけることができます。もし児童書のコーナーに立ち寄ることがあれば、松谷さんが書かれた民話も手に取ってみてください。語り手としての立場から、民衆の切実な感情や生き方を、しっかりと書かれています。

 謹んでご冥福をお祈りいたします。

投稿日: 作成者: Pictio Editor カテゴリー: 絵本関連のNews

[こころに残る絵本]おふろでちゃぷちゃぷ(文:松谷みよ子,絵:いわさきちひろ,出版社:童心社)

文=Pictio編集部

 今回紹介するのは、1970年の発売以来、長く広く愛読され続けている、「松谷みよ子 あかちゃんの本」シリーズの1冊「おふろでちゃぷちゃぷ」です。判型も小さく、20ページというかわいい絵本ですが、リズムよく無駄のない文章と、やさしくシンプルな絵が楽しさが、ぎゅっと詰まっています。

 「あひるちゃん、どこいくの?」「いいとこ、いいとこ」「あれ、タオルをもって、どこいくの?」「いいとこ、いいとこ」「わかった! おふろだ!」「グワッグワッ そうだよ はやく おいで~」……

 先におふろに入ったあひるちゃんに呼ばれて、男の子は「まって、まって」と、セーターやズボンを脱いでいきます。最後は、あひるちゃんといっしょに楽しくおふろ。「おふろ、ぼくだーいすき」。

 冒頭、説明もなしに、いきなり男の子とあひるちゃんのやりとりが始まりますが、子どもの視点に立った、やさしく温かな言葉使いによって、じつにすんなりと自然に、お話の世界へと入って行けます。小さな子どもにとっては、動物や人形も、みんなが「お友だち」なのでしょう。男の子とあひるちゃんとのせりふのかけあいが、テンポ感よく進んでいきます。

 この本の制作当時、活字の種類もいまほど多くはなかったはずですが、部分的に活字の種類を変えるなど、制作の工夫がなされています。

 絵は、たくさんの子どもたちを描いてファンも多い、いわさきちひろさん。一生懸命に服を一枚ずつ脱いで、最後ははだかん坊になる男の子の姿や動きが、じつにリアルに、そして愛らしく描かれています。

 水彩画の柔らかなタッチが印象的ないわさきさんですが、おふろがテーマのこの作品では、いっそう効果を上げていると思います。また、背景を省略して余白を広く残していますが、構図の取り方が巧みで、見る者の視点を集中して引きつけると同時に、周囲の様子や広がりを想像させるものになっています。

 そして、あひるちゃんが持っているタオルに描かれたカラフルな魚の模様は、いわさきさんの遊び心・おしゃれ心を感じさせるとともに、画面の中のいいアクセントになっています。

 おふろに入ったり髪を洗うのが、苦手だったりきらいなお子さんは結構いると思いますが、この絵本を読めば、きっと「おふろって、もしかして、いいものなのかな」と思ってもらえるかもしれません。その意味では、いわゆる「しつけ絵本」としての効果も期待できるわけですが、楽しく読んでいるのでそれを意識することもなく、いつの間にかおふろが好きになっていたというようなあたりが、この作品が読み継がれている理由ではないかと思います。

 実際、「この絵本によって、おふろが大好きになりました」という読者からの声も、たくさん寄せられているそうです。最後の場面の「あたま あらって きゅーぴーさん」は、実際にやって楽しむお子さんも多いのではないでしょうか。

本のタイトル おふろでちゃぷちゃぷ
作者 文:松谷みよ子,絵:いわさきちひろ
出版社 童心社
出版日 1970年5月
価格 本体700円+税
対象年齢 0歳から
判型/ページ数 21×18.6cm/20ページ
関連サイト 童心社公式サイトちひろ美術館

投稿日: 作成者: Pictio Editor カテゴリー: こころに残る絵本