[こころに残る絵本]しょうぼうじどうしゃじぷた(作:渡辺茂男,絵:山本忠敬,出版社:福音館書店)

文=Pictio編集部

心に残る絵本-しょうぼうじどうしゃじぷた-  今回紹介するのは「しょうぼうじどうしゃじぷた」。1966年の刊行以来、ずっと子どもたちの支持を得ている、乗り物絵本を代表する一冊だと思います(最初に掲載されたのは1963年の『こどものとも』第91号でした)。

しょうぼうじどうしゃじぷた ある町の真ん中に消防署があり、「じぷた」という名前の消防車がいました。同僚には、はしご車の「のっぽくん」、高圧車の「ぱんぷくん」、救急車の「いちもくさん」がいるのですが、彼らは火事が起きるたびにそれぞれの能力を発揮し、大活躍していました。

 じぷたにもポンプやサイレンがついており、働き者ではあるのですが、中古のジープを改造したちびっこ消防車だったので、小さなボヤのときにしか出動させてもらえず、同僚や町の子どもたちから、バカにされたり無視されていました。

 でもある日、消防署の電話がけたたましく鳴りました。それは、隣村の山小屋が火事になったという知らせでした。このまま放っておけば、燃え広がって山火事になってしまいます。しかし狭い山道を、のっぽくんやぱんぷくんなどの同僚たちは入って行くことができません。そこで消防署長さんは、じぷたに出動を命じました。いよいよ、じぷたが活躍するときがやってきたのです……。

 小さくて力のない(と思われていた)者が、じっと時を待ちチャンスを生かす。そして、隠されていた能力を発揮して、みんなに認められるという、シンプルで王道ともいえるストーリーです。状況の設定がしっかりしているので説得力があり、読者の共感を得てきたのだと思います。また、はっきりした悪役がいるわけではないところには、リアリティを感じました。

 絵は、明瞭な輪郭線と塗り分けによってすっきりと仕上げられながらも、特に各消防車の形状や細部は、実物に忠実にリアルに描かれています。本作品のような「メカもの」では、こういったリアリティは特に重要だと思います。

 その一方で、登場する消防車たちが、それぞれの特長を生かして巧みに擬人化され、じぷたが全速力で疾走する場面では、前掲姿勢になってスピード感を強調していたりするのは、絵本ならではの表現手法だと思います。

 制作されたのが50年近くも前のことなので、当然ながら自動車たちも当時の形式のものが描かれていますが、描線や色塗りの処理、部分的に思い切って背景を省略するなどのモダンな感覚によって、いま読んでも古さを感じさせません。

 乗り物の絵本といえば、男の子が読むものと思われがちです。でも、この絵本を読むと、けっしてそんなことはないことを教えてくれます。単なる乗り物が描かれた絵本ということではなく、じぷたを通じて描かれているメッセージがきちんと、読む人に伝わっていることではないでしょうか。「じぷた」の根強い人気は、それを物語っているのだと思います。2004年には、英訳版も出版されています。

タイトル しょうぼうじどうしゃじぷた
作者 文:渡辺茂男,絵:山本忠敬
出版社 福音館書店
URL http://www.fukuinkan.co.jp/bookdetail.php?goods_id=296
関連URL こどもの本の作家 渡辺茂男の仕事
http://www.shigeo-watanabe.com/
のりもの絵本作家 山本忠敬の世界
http://march-brown.sakura.ne.jp/jiputa/
対象年齢 読んであげるんなら:4歳から
自分で読むなら:小学校低学年から
判型/ページ数 20×27cm/28ページ
価格 800円+税

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