[こころに残る絵本]ねずみくんのチョッキ(作:なかえよしを,絵:上野紀子,出版社:ポプラ社)

文=Pictio編集部

心に残る絵本-ねずみくんのチョッキ- 今回は1974年の出版以来、40年にわたって読み継がれている絵本をご紹介しましょう。第一作が出てから、続編、またその続編と次々に出版され、今では30作を超えるシリーズになっています。第一作のタイトルは「ねずみくんのチョッキ」。小さい頃、読まれた方も多いのではないでしょうか。

ねずみくんのチョッキ 小さなねずみくんは、お母さん手作りで編んでくれた、赤いすてきなチョッキを着て、「似合うでしょ」とごきげんです。そこへあひるさんがやって来て、「ちょっと着せてよ」と、ねずみくんのチョッキを借りました。「少しきついが、似合うかな」。

 するとこんどは、さるさんがやって来ました。だんだんからだの大きな動物たちが、次々に現れるものですから、あらあら、チョッキはどんどん伸びていってしまいます……

 次はどうなっちゃうんだろう、そのまた次は……という展開は、小さな子どもにもわかりやすく、楽しく読めるでしょう。はっきりとした起承転結をあえて取らず、シンプルにくり返される語り口は、ユーモアとペーソスに富んでいて、読み聞かせ会などを見ても人気があるようです。

 絵は、鉛筆の柔らかいタッチを生かして、基本的には黒一色で描かれ、ねずみくんのチョッキ(と表紙の題字)の赤い色だけが、鮮やかに強調されています。表紙を見ると、主人公であるねずみくんが、画面の下にちょこんと小さく描かれ、余白が広く取られています。グレーでからだが小さいというねずみの特徴を、巧みに生かした画面構成です。

 また、絵本全体を通して画面の四方が、ややくすんだ緑色の枠で額縁状に囲われています。特に具体的な意味合いはないのかもしれませんが、一度この形で見てしまうと、枠のない状態を想像しづらいような、特徴的なデザイン処理です。紙芝居の舞台(木枠)と同じように、読者を物語世界へと誘う、導入の役割を果たしているようで、デザインがトータルで考えられていると思いました。

 緑は赤の補色(反対色)であり、赤をいっそう浮かび上がらせるのにも一役買っていると思います。また、続編となるシリーズ各作品では、この部分の色を一作ごとに変え、一目で区別するのにも役立っています。

 ストーリーに戻ります。最後の最後、ねずみくんがすっかりしょげてしまい、とぼとぼと立ち去って終わるのかと思いきや、ぞうさんとのほのぼのとしたラストシーンが待っています。

 ちなみに、ウェブサイト「ねずみくんのページ」によれば、ねずみくんは身長2.6センチで体重3.9グラム、好きな食べ物はチーズで飲み物はグリーンティー、チョッキが赤いのは、お母さんが、迷子になっても目立って見つけやすいようにと、赤で編んでくれたのだそうです。

 1975年に児童福祉文化賞奨励賞・講談社出版文化賞絵本賞を受賞しています。

タイトル ねずみくんのチョッキ
作者 作:なかえよしを,絵:上野紀子
出版社 ポプラ社
URL https://www.poplar.co.jp/shop/shosai.php?shosekicode=23800010
関連URL なかえよしを+上野紀子とねずみくんのページ http://www1.odn.ne.jp/~ccu70240/
対象年齢 2~5歳
判型/ページ数 24.5×21.5cm/32ページ
価格 1000円+税

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