[心にのこる絵本]生命の樹 チャールズ・ダーウィンの生涯(文・絵: ピーター・シス,翻訳:原田勝,出版社:徳間書店)

文=Pictio編集部

心に残る絵本 いつの時代も、科学は綿密な観察や実験、そして幾重にも渡る実証をクリアして進んでいきます。今回は、綿密な観察の上に考察を積み重ね、ついに「進化論」を生み出した博物学者・ダーウィンの生涯を描いた絵本「生命の樹 ─チャールズ・ダーウィンの生涯─」をご紹介しましょう。

生命の樹 「すべての生き物は、神によって創られた」─そう信じられていた19世紀のイギリスでチャールズ・ダーウィンは生まれました。少年時代、ダーウィンは学校嫌いでしたが、野山を歩き回ってさまざまなものを集めたり、兄と二人で化学の実験をすることは好きでした。

 やがて青年になったダーウィンを、父親は医者にしたいと考えます。しかし、ダーウィンは医学の勉強よりも、地質学、動物学、植物学といった自然科学を好みました。

 そして、植物学のヘンズロウ教授の誘いによって、調査船ビーグル号の航海に加わり、南アメリカ大陸やガラパゴス諸島など、未知の世界をめぐる旅へと乗り出します。

 ビーグル号での航海は、ダーウィンの生涯において、何物にも代えがたい貴重な経験となり、その後に彼が携わるすべての仕事の方向を決めたと、ダーウィン自身は語っています。

 彼は、ガラパゴス諸島で見た生物の分布にたいへん驚き、自分は、生物の種(しゅ)が、さまざまな目的に合わせて、巧みに変化していく法則を発見したと信じていました。

 そして、1859年の著書「種の起源」の中で、自然淘汰による進化論を発表して世界を揺るがせ、生命の神秘に迫る偉大な科学者になっていったのです。

 作者のピーター・シスは、本書を描くにあたり、ダーウィンに関する多くの資料を参考にしています。中でもダーウィン自身が書いた日記や手紙、航海日誌の生き生きとした記述が着想の源となったと、「覚え書き」の中で述べています。やはり、日々、きちんと記したノートは大切なんですね。

 絵本の構成は独創的です。よくある物語絵本のように、登場人物たちがいて背景があってという一般的なものではなく、複数の場面を組み合わせて大きな一つの画面を作ったり、海図や船の断面図、図鑑やコマ割り的な構成を取り入れるなど、あらゆる手法を駆使して、多面的・多層的にダーウィンの生涯と、研究の成果とを描きだしています。

作者のピーター・シスのWebサイトには、いくつか画面が掲載されています。

 生命の樹 5 生命の樹3

 クライマックスの場面では、ページが観音開きになるよう趣向が凝らされており、また、表紙裏の見返しも有効に使われています。作品全体の設計が綿密に計算され、情報量が多いコンテンツをうまくまとめあげています。

 絵は点描の技法によって描かれた細密なもので、やや抑え気味の色調とも相まって、透明感がかもし出されています。絵を見ていると、サイズもB4版の大きさが必要だったと納得できます。

 この作品は、2004年のボローニャ国際児童図書展で、ノンフィクション大賞を受賞しています。この絵本は、自分が本当に好きなことを見つけたら、それを徹底的に突き詰めること、そして、それが人生において喜びや楽しみをもたらしてくれることを教えてくれます。子どもだけでなく、大人にとっても、十分手元に置いておく価値のある絵本だと思います。

タイトル 生命の樹 チャールズ・ダーウィンの生涯
作者 文・絵:ピーター・シス,翻訳:原田勝
出版社 徳間書店
URL http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198620271
発行日 2005年6月
価格 1700円+税
判型/ページ数 B4判/36ページ
対象年齢 特に記載はありませんが、本文は漢字仮名まじり書きで、漢字は総ルビ。内容から判断すると小学校3年生くらいからではないでしょうか

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