[見つけた新刊絵本]花びら姫とねこ魔女(作:朽木祥,絵:こみねゆら,出版社:小学館)

文=Pictio編集部

[見つけた新刊絵本]-- 児童向けの作品やファンタジーで評価の高い、朽木祥さんと、繊細な画風で子どもから大人まで根強いファンを持つ、こみねゆらさんによる物語です。

 挿絵に豊富にありますが、ページ数が多いので、児童書の範疇に入るのかな。タイトルは「花びら姫とねこ魔女」です。ねこ魔女という言葉は、珍しいですね。子ども向けの作品では、こういう言葉はとても大切ですよね。本屋さんで表紙を見て、タイトルに惹かれました。

image さて、ストーリーです。昔、ある国のお城に、だれも見たことがないくらい美しく、しかし春の初めの天気のように気まぐれでわがままなお姫さま、花びら姫がいました。花びら姫は、自分が着るものから食べるものまで、すべてのものが“特別”でなければならない、と思っていました。

 ところが、年に一度の大きなお祭りの夜のこと、花びら姫は、お城を守っている小さな妖精たちをおこらせてしまいます。すっかり腹を立てた妖精たちは、花びら姫にいちばん恐ろしい魔法をかけてしまったのです。

 妖精たちの呪いを解くカギは“特別な猫”にあると聞いた花びら姫は、その猫を探して回ることにしました。花びら姫にとっての特別な猫は、はたして見つかるでしょうか?

 お城で優雅に暮らすお姫さま、妖精、魔法、荒れ果てた石の館……といった、王道・古典的なモチーフが登場し、アンデルセンやグリム童話のような趣きさえある、正統派のファンタジーと言えるでしょう。毎日を忙しく過ごす日本の子どもたちの心を連れ出して、いっとき、中世の異国の地にいざなってくれるかもしれません。

 それでいて、いまの子どもたちの心に響く現代的なセンスも、しっかり持ち合わせた作品だと思います。特に猫好きなお子さんと大人には、たまらないエッセンスが入っています。

 人間、妖精、猫のほか、「魔女」に仕える、カエル、トカゲ、ヘビ、ムカデたちの”大事な脇役”の存在も絶妙です。「平べったい顔をした商人たち」が、クトゥルフ神話を思い起こさせるなど、ぞっとするような不気味さも、ちらりと顔をのぞかせます。

 全部で80ページと、かなりのボリュームがありますが、物語の骨格がしっかり構築され、細部の設定まで練られています。物語が好きなお子さんであれば、最後までしっかり食いついてくれるでしょう。ページをめくるたびに、この先はいったいどうなるんだろうとワクワクしながら、飽きることなく最後まで読ませてしまう本だと思います。

 寝る前に、お子さんに本を読んであげる方は多いと思います。この物語は話の展開が分かりやすく、起承転結のような流れがよく分かるように書かれています。ですから、区切りのよいところで「続きは、また明日ね」と、数日かけて読むのにもおすすめです。きっと、ワクワクしながらよい夢を見ることができるのではないかと。

 絵は、作品の世界観・イメージにぴたりと寄り添い、繊細なタッチで描かれています。本全体の半分が絵に充てられ、カラーとモノクロを合わせてかなりの点数にのぼります。これは、すごい作りだなぁ。

 この絵本には88匹もの猫が登場しますが、それぞれに実在のモデルがいるそうです。2012年秋に、ツイッターで「自分の特別な猫大募集!」をかけたところ、大反響があり、多くのかわいい猫の写真が送られてきました。その写真を見ながら、こみねさんが一匹ずつ描いていったそうで、飼い主には「うちの猫」だとわかるということです。

 朽木さんとこみねさんは、お互いの作品が大好きというファン同士の関係だったそうで、一緒に絵本を創りたかったという、長年の思いがこの作品で実現しました。

 ファンタジーでありながら、「人にとって“特別なこと”とは何なのか」という、普遍的なテーマ・問いかけが、読んだ後にも心に残る本でした。

 文章に出てくる漢字を見ると、中学で習う字も出てきますが、難しい漢字にはルビが振られています。ただ、ページ数も多めなので、自分で読むのであれば、小学校3年生くらいからになると思います。物語はとても分かりやすいものなので、読んでもらう時は、年長さんからでもいいかもしれませんね。

タイトル 花びら姫とねこ魔女
作者 作:朽木祥,絵:こみねゆら
出版社 小学館
URL http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784097265238
出版日 2013年10月
価格 本体1600円+税
ページ数 80ページ
対象年齢 小学校中学年から

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