[見つけた新刊絵本]しろうさぎとりんごの木(作:石井睦美,絵:酒井駒子,出版社:文溪堂)

文=Pictio編集部

[新刊絵本 しろうさぎとりんごの木]-- 今回、紹介するのは、大好きなお父さんとお母さんに、愛情をたっぷり注がれてすくすく育っている、しろうさぎの女の子の、小さな幸せを描いた絵本「しろうさぎとりんごの木」です。絵は酒井駒子さん、文は石井睦美さんです。

しろうさぎとりんごの木 しろうさぎの子は、森の中の小さな家で生まれました。まだ小さなしろうさぎにとっては、見るもの触れるもののすべてが、珍しく新鮮です。しろうさぎには、知らないことがたくさんありました。

 しろうさぎが住む小さな家の玄関の脇には、一本のりんごの木が立っていました。大きな木ではありませんでしたが、秋になると、いい匂いのする真っ赤な実がなりました。うさぎの一家が食べるくらいには、十分なくらいの。

 ある日の朝、しろうさぎの子は、ジャムを塗ったパンを生まれて初めて食べました。ジャムは、お母さんうさぎが、りんごの実をお砂糖で煮て作ったのです。「おいしい! これはなあに、お母さん?」。お母さんが作ったジャムに感動し、りんごの実から作ったことを聞いたしろうさぎの子は、お母さんに内緒でリンゴをかじりに行くことにしました…。

 何か大きな事件が起きるわけではありませんが、それでいて、巧みな起承転結によって物語が構成されています。日常の小さなできごと、幼い子どもの細やかな心情、お母さんとの会話、家の中にあるものたちや、それにまつわるエピソードなどが、ていねいに言葉を選んで描かれます。本当に、一つ一つの言葉が選び抜かれて紡がれています。

 文章を受ける絵は、ザラッとした質感が特徴で、タッチの「かすれ」や「にじみ」までをも絶妙にコントロールされている印象を受けます。先に黒い下地を塗った上に、アクリルガッシュで色を入れていき(筆以外に、ペインティングナイフなども使われているのかな)、最後に輪郭などの線を描く技法のようです。

 彩度の低い、無彩色に近い中間色も多用され、その中に、りんごの木の葉の緑や、実の赤、うさぎたちが着ている服などの鮮やかな色調、そして、うさぎの子の白く愛らしい小さな姿が浮かび上がってきます。

 画面の中の陰影や奥行きの表現が見事で、全体に品の良さが感じられ、いい意味でヨーロッパ辺りの絵本のような趣きがあります。文字のページに添えられた、モノトーンの小さなイラストは、メインのストーリーを補完しながら、いいアクセントになっています。装丁にもよく気が配られ、絵本としての完成度を高めています。

 作者の石井睦美さんは、酒井駒子さんの絵が大好きで、以前から「いつか一緒に絵本を作りたい」と思っていたそうです。石井さんが愛情を込めて、さりげないうさぎの子の日常を描き、そこに酒井駒子さんが情感たっぷりに絵をつけた、読み終わった後に、豊かな余韻に浸れる一冊だと思います。

タイトル しろうさぎとりんごの木
作者 文:石井睦美,絵:酒井駒子
出版社 文溪堂
URL http://www.bunkei.co.jp/books/details.php?9784799900130
出版日 2013年10月
価格 本体1500円+税
判型/ページ数 A4判変型(263×212mm)/32ページ
対象年齢 小学校低学年から

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