書店に置いてあった本を手に取って読み始めると、おもわずホロリとくる絵本でした。いや、絵本ではなくて詩集ですね、これは。いや、歌集か。題名になっている「はな」ちゃんは、生まれてから1年3カ月でお母さんを亡くされたそうです。その後は、おばあさんが育てていらっしゃるんですね。あと、周りにいる親戚の方なども。文章、というか歌は、おばあさんが、孫娘のはなさんのことを、歌ったものです。
“遇いたいよ ママに会いたい 幼子が
この世にいない 母恋いて泣く”
はなちゃんが、何歳の時の歌なのかは、わかりません。でも、母を想う子の気持ちが、痛いほど伝わってきます。はなちゃんの心を思いやる、おばあさんの気持ちも。
でも、悲しい歌ばかりではありません。
“唐突に 幼は聞きたり
涙のいろは 何いろですか
答うることに 我はとまどう”
ほんと、涙の色は何色なんでしょう。おばあさんに尋ねる、はなちゃんの不思議そうな顔が思い浮かびます。
絵を描いた谷田梨奈さんは、はなちゃんの従姉妹になるそうです。後書きには、妹や娘のようにかわいがっていると、書かれていました。悲しい歌を読むと胸が締め付けられるけれど、その隣には、暖かい絵が描かれています。
おばあさんのつぶやきも、描かれている絵も、はなちゃんをひたすら見ているところから生まれてきたもの、ということがよく分かります。48ページもありますが、基本的に見開きに1つのつぶやきなので、読む時間は短いです。
小さいお子さんには、ちょっと伝わりにくいかもしれません。もうお孫さんがいらっしゃる年代の方、そして何よりお子さんを持つ方に、是非、読んでいただきたい絵本です。書店にありましたら、一度、手に取ってみてください。
タイトル | はな |
作 | 作:下館 みゑ子,絵:谷田 梨奈 |
出版社 | 明治書院 |
出版日 | 2012年12月 |
価格 | 1575円 |
ページ数 | 48ページ |
対象年齢 | 特になし |