親子で楽しむクラシック(第1回)-一緒に楽しめるコンサート

文=飯尾 洋一(音楽評論家)

music クラシック音楽のコンサートは大人の楽しみ。一般的にはそう考えられています。演奏会のチケットを見ると、どの公演にも「※未就学児入場不可」などと注意書きが添えられています。未就学児は演奏中にじっとしていられないから、ということなのでしょう。実際には、演奏会場では未就学児どころか小学生の姿もめったに見かけません。

 では、親子で楽しめるコンサートはないのでしょうか? そんなことはありません。実は近年、親子のためのコンサートが数多く企画されるようになりました。それぞれが子供を飽きさせず、なおかつ芸術的な水準を保つよう工夫を凝らしたもので、むしろ今、親子コンサートは音楽界でも注目を浴びる分野と言ってよいかもしれません。

 子供たちに早くから本物の芸術に触れてもらい、豊かな感受性や創造性を育みたい。クラシック音楽に対して、そんな教育的な役割も期待されているだと思います。それに加えて、親の事情もあります。子供が幼い間は、なかなか演奏会に出かけるチャンスがありません。しかし親子コンサートであれば、家族そろって生の音楽に触れることができます。

 また、親子を対象にしたコンサートであれば、一般向けのものとは違って、うっかり咳でもしようものなら周囲からの冷たい視線を感じるといったような心配もありません。客席はみんな親子連れです。プログラムも親子向けに練られたものばかり。安心して、気楽に楽しむことができます。

2011081201 親子コンサートのハイシーズンは、なんといっても夏休み。たとえば、東京・初台の東京オペラシティ街区では、7月21日(木)~8月6日(土)の期間、「アーツシャワー2011」という夏の親子向け芸術祭が開催されました。東京オペラシティ街区といえば、新国立劇場、コンサートホールなど3つのホール、2つの美術館が集まる一大複合文化施設。その各々の会場で、子供たちが音楽と美術に触れて、さまざまな種類のアートを体験したはずです。

 なかでも注目されたのは、新国立劇場で開かれるこどものためのオペラ劇場「パルジファルとふしぎな聖杯」(4歳~)。これはワーグナーのオペラ「パルジファル」と「ラインの黄金」を題材として、子供でも楽しめるようにアレンジされた舞台です。大人向けの原作でも、ワーグナー作品には剣と魔法、神と英雄、聖杯、奇蹟といった神話的でファンタジー風の物語が展開されるのですから、親子向け舞台には格好の題材でしょう。原作は長大で難解ですが、こちらは易しく、短い一幕物に仕立てられています。

 子供向きとはいっても、出演する歌手のクオリティも高く、オーケストラと合唱団も本物。子どもを連れて行った大人にとっても、発見の多い舞台になったのではないでしょうか。「パルジファルとふしぎな聖杯」は、新国立劇場で7月22日~24日までに5公演が開かれたほか、全国公演として、7月31日にサンポートホール高松、8月6日に兵庫県立芸術文化センターにおいても上演されました。この夏には、ほかにもまだまだたくさんの親子コンサートが予定されています。次回は、注目の公演をご紹介したいと思います。

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