新・子どもとIT(第1回)-ITって一体何のこと?

文=塩田紳二

[子どもとIT]-- この10年で、 スマートフォンやタブレットなど、私たちのまわりには、立て続けに新しい「モノ」が登場しています。さらにインターネットやオンライン販売、メールやチャット、SNSといったさまざまな「コト」が可能になりました。以前からインターネットを使っていた人でも、メールを専用プログラムでなく、GmailなどのWebブラウザーで扱うなど、使い方が大きく変化している方も多いでしょう。

 家庭でも、インターネットに接続するテレビやビデオレコーダーなどさまざまな機器が登場し、無線LANを使ってインターネット接続している家庭も普通になりました。現在の私たちの周りにあるものには、私たちが子供の頃には、想像できなかったもので溢れています。

 そのため、「新しい技術はよくわからない」–こうした漠然とした不安をかかえている人も少なくないでしょう。また、子供がスマホなどをどう使っているのかよく理解できなかったり、話している内容もよくわからないといった保護者の方もいらっしゃるかもしれません。

 どんな世の中になるのかを正確に予測することは専門家にも難しいことです。そして、世の中がわかりにくくなったのは、さまざまな技術が組み合わさって、さらに複雑なものを短時間のうちに作り出し、利用することが増えてきたからです。

 そして間違いないのは、これからも、今以上の速度で新しいモノや新しいコトが、どんどん増えていくということです。その反動で、使われなくなったものや不人気なものは、あっという間に消えていくことになるでしょう。この点だけを見れば、現在は、10年前よりも、社会や物事の変化が早くなっています。そして、より多くのモノやコトが登場するようになっているのです。

世の中を動かす情報技術 「IT」

 こうした現在の状態に直接関連した技術に「IT(アイティー):情報技術、Information Technology」があります。現在の社会は、このITに支えられているといってもいいでしょう。ITの発展が、その他のさまざまな科学や技術の発展を促し、このために世の中全体の動きが速くなってきたのです。

 ITという言葉は、20年ぐらい前に産まれました。それまで個別に発展してきた電子技術やコンピュータ技術や通信技術などが「インターネット」で融合して組み合わさったために、新しい名前が必要になったからです。しかし、それぞれの技術はお互いに似た部分はあっても、まったく違う部分をもっていました。共通項は、どれも「情報を扱う」ことができるというものでした。

 このため、「情報+技術」でITとなったのです。寄せ集めに無理矢理つけた名前なので、理解しにくいのは当然で、あまりいい名前ではないのですが、いまのところ、これに代わるほかの名前がないため、広く世の中で使われています。

 「情報」とは、私たちが「知覚」できるものすべてです。しかし、ITでいう情報とは「デジタルデータ」に限られます。これは、あるときは「ファイル」や「データ」、「メッセージ」などとも呼ばれることがあり、メールやチャットの内容なども「情報」の1種です。また、スマートフォンなどで扱う、音楽やビデオ、デジタルカメラで撮影した「写真」も「情報」です。あるいは、Webページに表示されているものはすべて「情報」です。ITとは、こうしたものを扱うものすべてに関連する「技術」なのです。そして、現在では、さまざまな情報が簡単にデジタルデータ化されるようになりました。

ハード、ソフト、サービスそしてネットワーク

 具体的には、ITは大きく4つの要素が合わさっています。

ITの概念図

■ハードウェア
 スマートフォンやタブレット、PCなどのコンピューター製品やコンピュータを応用したゲーム機、家電製品、そしてそのために使われる部品である「マイクロプロセッサ」などの半導体技術など。ハードウェアにはかならず「カタチ」があり、人が触れることができます。

■ソフトウェア
 ハードウェアを動かすためのウィンドウズ、アンドロイド、iOSなどの基本ソフトウェアと、ワープロや表計算、メールソフトやWebブラウザなどはすべてソフトウェアというものが実現しています。ソフトウェアには「カタチ」はありませんが、メモリやファイルなどとして存在していて「見る」ことができます。また、ソフトウェアを入れた「ディスク」や「カートリッジ」などとして存在に触れることができますが、これらはソフトウェアの「入れ物」でしかありません。

■サービス
image フェースブック、ツイッターなどのSNS、グーグル、アマゾンなどは、すべてインターネットを介して利用する「サービス」で、「クラウド」などとも呼ばれます。実体は、「サーバー」という大きなコンピューターで動くソフトウェアですが、インターネットを介して、ユーザー側ではWebブラウザ(パソコンの場合)や専用アプリ(スマートフォン、タブレットなどの場合)で利用します。イメージ的には、テレビ局とテレビのような関係です。

 サービスには、「カタチ」がなく、ハードウェア、ソフトウェアの大半がネットワークの「向こう側」にあるので、存在は希薄です。どこか一カ所にあるというわけではありません。しかし、なんらかの機能を提供してくれるため、存在を知覚することは可能です。存在していることはわかるが、触ることができない、遠くにある、といったイメージから、サービスを「雲」に例えたのが「クラウド」です。

■ネットワーク
 ネットワークとはコンピュータやさまざまな機器を接続して「通信」を可能にする仕組みです。「通信」とは、情報を送ったり受け取ったりすることです。あるいは情報を「交換」することといえます。ネットワーク同士を接続するインターネットは、世界中のコンピューターや機器を接続しています。

 ネットワークは、ハードウェアとソフトウェアから作られるものですが、こうしたものがつながって通信ができる「状態」であるために、どこか一カ所にあるわけではありません。逆にいうと、我々が見たり、触ったりすることができるものはネットワークの「一部」でしかありません。しかし、「通信」ができるということは、そこになんらかのネットワークがあるということです。

 ITの基本はコンピュータ技術です。昔、といっても30年ぐらい前には、ハードウェアとソフトウェアがコンピュータ技術の重要な要素でした。昔のパソコンやゲーム機では、ハードウェアとソフトウェアがはっきりと見えていました。パソコンやゲーム機の「本体」がハードウェアで、CDやカートリッジにソフトウェアが入っていたからです。このとき、パソコンやゲーム機に表示される「画面」は、すべてソフトウェアが作っていました。

 しかし、ネットワークの一つである「インターネット」がこれを変えてしまいました。ソフトウェアはネットワークを使って持ってくる(ダウンロード)ことができ、ディスクやカートリッジといった物理的な入れ物が不要になったのです。さらに入れ物が不要になっただけでなく、ソフトウェアを「サービス」というものに置き換えることも可能になりました。

 スマートフォンやパソコンで見えるのは「画面」だけで、その画面を作るための「情報」をインターネットのどこかにある「サーバー」という大きなコンピュータで作って、ネットワークで送っても、ソフトウェアと同じような機能が提供できることがわかったからです。

 現在のスマホを使っているとき、何がソフトで何がサービスなのかはっきりと意識させられることはありません。スマートフォンに表示されている「ボタン」をあなたが押したとき、場合によっては、インターネットの向こう、ひょっとすると、地球の反対側にあるコンピューター(サーバー)が何かの処理を始め、その結果が画面に出てきているのかもしれないのです。

ITがさまざまな分野の進歩を加速

 このようにハードウェアとソフトウェアにネットワークが加わり、サービスという新しいものが入ってきたことで、どんどん複雑になってきたのです。また、ハードウェアやソフトウェア、ネットワーク技術もそれぞれ進化して、より高度な使い方が可能になっていきます。また、それぞれ技術の進歩が、他の技術に大きな影響を与えるようになりました。このため、それぞれの分野での変化の速度が速くなり、結果として、これらを組み合わせたITの変化も速くなっていったのです。

 そして、今、わたしたちは加速されたITにより、社会のありかたも短時間で変化する時代にさしかかっています。ちょっと前まで、ポケベルだったものが、いつのまにかPHS、携帯電話になり、そして今はスマートフォンです。これらは見た目も違えば、技術的にも大きく違います。また、それぞれの機器が持っている能力も大きく違います。能力が多くなれば、できることもどんどん増えていきます。

 また、ITだけが速いスピードで進歩するだけではありません。IT以外の技術分野もITのために進歩が加速されていくのです。さまざまなモノの「設計」や「デザイン」など、いまでは、コンピューターを使って行うのが普通です。さらに、ビジネス上の連絡や通知、チーム内の情報共有などもコンピュータやスマートフォンなどを使うのが普通になりました。

 ITに関連していないビジネス分野でもWebサイトの開設、インターネットでの情報提供や販売、集客といったこともいまでは短期間で可能です。老舗や昔からある製品がオンライン販売で復活したり、オンライン販売で新製品が数秒で売り切れた、といった話を聞いたことがあるかもしれません。IT技術は、自身で新しいものを生み出していくだけでなく、さまざまな分野の技術やビジネスをも加速しているのです。

 この連載では、サービスや技術などの話題を軸にして「ITの全体象」を描けるように説明していくつもりです。ですが、すべてのことを理解する必要はありません。ITに関連するほとんどのものは、「組み合わせ」からできており、その要素の組み合わせが数多くできるようになったこと、さまざまな分野に応用できるようになったことで、複雑になったように見えているだけです。ある程度全体象を持てるようになれば、今日、明日、起こることは、すでにあることの組み合わせによる「小さな変化」だと受け止めることが可能です。

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