絵本の仕事
ある園長先生曰く「絵本は食事のようなものです」
つい先日、ある幼稚園の園長先生に話を伺う機会がありました。4月は、いろいろ保護者さんからの相談も多いようで、絵本の選び方についてもお話しされたそうです。ここで紹介するのは、1つの考え方で、そうしないといけない、というものではありません。こういう考え方もあるのか、という程度にお考えください。ここでは、聞き書きの形でご紹介します。
絵本は、こころの食事
最近は、早期教育に皆さん熱心なので、絵本もなるべく早く難しい内容のものを読ませようという傾向が、以前よりも早まっています。もちろん、それが合うお子さんもいます。その一方で、興味を持てないお子さんもいます。あたり前ですよね。そのときに、焦ってしまうお母さんもいらっしゃいますが、そんな時は、次の考え方をしてみてはどうでしょうか。
体の成長には食事が必要なように、心と頭の成長には絵本が必要です。しかし、子どもが成長していないうちに離乳食をあげても消化できないのと同じで、成長に合った絵本でないと、読んでも意味がありません。成長には役立たないのです。ついつい他のお子さんと比較してしまいますが、本が心や頭の食事だと考えると、他のお子さんと比べることもなくなり、気持ちが楽になります。焦って読んでも良いことはありません。お子さんの成長を何十年も見てきた立場から言えば、その差は微々たるものです。
どんな本を与えるべきか
本の選び方も悩んでしまうことが多いようですね。どんな絵本を選んでいいのか分からず、お子さんに選ばせている家庭もあります。
これも、食事に例えると分かりやすいかもしれません。お子さんが、どれだけハンバーグやカレーが好きでも毎日という訳にはいきません。やはり、栄養のバランスを考えて野菜を食べたり、知らない料理を出してお子さんの味覚を広げようとしますよね。
本も同じです。ある特定の本だけ好き、というお子さんがいます。もちろん、それは素晴らしいことです。でも、他の本を知ることで、もっとその本の良さを知ることができるかもしれませんし、知らない世界を体験できるかもしれません。そう考えると、いろいろな絵本を読むことの意味が納得できるのではないでしょうか。
小さいお子さんの場合、知らない世界を知るのは、保護者であるお父さんやお母さんを通じてがほとんどです。お母さんやお父さんは、心や頭がバランス良く発達してほしいと思うのであれば、読みたい本だけを与えるのではなく、バランスを考えて本を選ぶことが必要です。自分が食べたいものだけを食べていては偏るのです。そして、保育の立場から言えば、読み聞かせを嫌う子はまずいません。ですから、お父さんやお母さんが選んだ本は、そのまま与えるのではなく、必ず自分が目を通して、本の良さを理解して読んであげてほしいのです。
子どもの頃、おいしい食事を食べると、その味はきっとお子さんの舌に残り味覚の基礎となります。絵本も同じです。お子さんの心にヒットする絵本は、ずっと心に残って精神の成長を支える土台となります。いろんな味を知っているほど、好き嫌いは減りますし、食に対する好奇心も増します。
自分で読みなさい、とは言わないで
もう一つ、絵本では大事なことがあります。小さいお子さんがお腹を空かせても、「自分で料理して食べなさい」とは言わないですよね。本も同じように考えてほしいのです。「自分で読みなさい」というのではなく、お父さんやお母さんが、読んであげてください。絵本は心と頭の食事だと考えてください。
その意味で、スマホやネットにある音声読み上げ機能が付いたデジタル絵本は、あまりおすすめしません。食事は、みんなで一緒に食べている時間が一番楽しい時間ですよね。一番楽しい時間を、機械に任せてしまうのは、あまりにももったいないからです。最近は、電子書籍の絵本も出てきていますが、あれこそ、お父さんやお母さんが読んであげないといけないものだと思っています。もちろん、時間がないときもあります。食事も外食やインスタントで済ますこともあるでしょう。でも、それはあくまで特別の日だけで十分かな、と思います。
本を選ぶのが大変という方は、幼稚園で紹介しているおすすめ本や、図書館で紹介されている本をまずは読んでみてください。そういうリストは、ある意味失敗しないことが保証されている料理のレシピと同じようなもの。最初は、そんなリストを使っていくと、だんだん応用が効くようになります。料理が上手になるのと同じように、本の選び方も上手になるのです。最初から料理が上手な人はいないのと同じで、絵本選びもすぐに上手くはなりません。
ざっと、こんなお話しでした。どれか特定の本選びということではありませんが、考え方の1つとして読んでいただければと思います。
2015年4月28日 カテゴリー: 絵本の仕事
[絵本の仕事]絵本「したきりすずめ」の大型紙芝居を納入
年末に「ごんぎつね」の大型紙芝居を納品したあと、今度は図書館から「したきりすずめ」の紙芝居の発注をいただきました。最近は、読み聞かせも盛んですが、通常だとA3版が最大くらいなんですね。でもPictioの紙芝居は、サイズが約1460mm×900mmとかなりの大きさです。今まで、幼稚園や保育園、海外の日本人学校には納入してきたのですが、このサイズで図書館は初めてです。
多くの人が使えるように、普通の紙芝居以上にしっかりした用紙を選び、かつ破れたとしても、すぐにそこだけ補充できる体制を整えた上で納品しました。高いものだけに、1度買っていただいたら、長く使っていただけるようにしています。
以前、ある幼稚園の園長先生と話をしていたとき、「最近は近眼のお子さんが増えているような気がします」と仰っていました。大型の紙芝居が望まれるのは、そんな理由もあるのかもしれません。
2015年1月19日 カテゴリー: 絵本の仕事
[絵本の仕事]年の初めは紙芝居
年末に、片付けのために出社していたら、切羽詰まった感じの電話がかかってきました。なんでも、お正月に「ごん狐」の読み聞かせを予定されている方なのですが、読み聞かせの許可をとっていないのと、図書館で大判の絵本のごんぎつねが見つからないとのこと。年末に発送することを約束して、無事届いたようです。さきほど無事、新春読み聞かせに間に合った、とのメールをいただきました。
最近は、読み聞かせ用途での問い合わせもいただくことがあるのですが、サイズが大きいほうが、後ろのほうに座るお子さんも見てくれるので好まれるそうです。写真は、A0版サイズでの紙芝居。横に並べてあるのがA3版です。年々、本の読み聞かせは増えているようですね。何はともあれ、間に合ってよかったです。
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